生活保護の相談・申請

生活保護の相談に会社の上司が同行してもいいの?

man sitting in front of computer

この記事は生活保護の相談・申請に際して会社の上司が同行してもいいのかという話です。

こんにちは、元生活保護ケースワーカーの坂本と申します。

この記事は

「会社の社員が急に倒れた」

「働けなくなったが身寄りもお金もない」

「どうしたらいいか分からない」

と考えている総務の担当者や上司、社長に向けて書いた記事です。

社員が倒れ仕事ができなくなってしまった場合、一般にそれ以上の雇用の継続は困難となるでしょう。

この場合雇用保険の休業補償や労災保険等各種社会保険制度の対象となるでしょう。

しかしながら、制度の対象外の場合や支給金額だけでは生活を賄えないこともあるでしょう。

そのようなときは最後の手段として生活保護を検討しなければなりません。

しかし、本人に身寄りがなかったり、知的・病的な問題があったりと本人だけで相談することが困難な場合もあるかもしれません。

こういった場合、会社の社員、上司などが相談に同行することは可能なのか?

結論から言うと「生活保護の相談時に会社の上司が同行するのは可能・福祉事務所的にはそちらのほうがありがたい」ということになります。

生活保護申請・受給までの段取りはどうなるのか?

「生活保護申請から受給までの段取りはそもそもどうなっているの?」

と疑問に思う方も多いでしょう。

詳細は別のページに譲りますが、基本的な段取りは以下の通りです。

生活保護の相談・申請に伴う基本的なフロー
  • 福祉事務所(市区町村役場の福祉課)に訪問するか、職員に病院、自宅まで来てもらって生活保護の相談行う
  • 必要な場合はその場で生活保護の申請を行う
  • 必要書類を記載提出したあと概ね14日以内に生活保護の受給の可否の決定が出る
  • 決定となった場合、保護費の支給は申請日に遡ってその次の週ぐらいにされる

保護相談・申請時に会社の上司や総務担当者などが同行してもらいたい理由

生活保護申請時に会社の上司や総務担当者が同行して欲しいという理由は以下の通りです。

相談の際の本人の補助をしてもらえるから

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Photo by Sơn Bờm on Pexels.com

生活保護の相談は一般に本人にとってかなりの負担になります。

言いたくないことを話したり、今まで聞いたことのない単語で話されたり、今後の事務手続きについて説明を受けたり…

生活保護の相談を受ける状況になった人の多くは肉体的・精神的に健康な状態でない場合が多く、健康な方でも難渋する内容をすべて正しく理解することは困難です。

このため上司や総務担当者が同席しメモを取ってもらったり、本人に噛み砕いた説明をしてもらったり、可能ならば手続きの代行をしてもらえると非常に嬉しいです。

また一人で役所に行くということは心理的にも大きなハードルがあると思うので上司など見知った人と来てもらった方が本人にとっても良いかと思います。

福祉事務所としても第三者的な立場から本人の来歴や状況について説明がいただけると今後のプランを立てる面でも非常にありがたく思います。

社会保険制度の状況の確認や対応ができるから

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Photo by Pixabay on Pexels.com

生活保護相談・申請者の中で社会保険制度を理解している人は多くありません。

その中で生活保護受給時には健康保険から生活保護制度に切り替えたり雇用保険や障害年金の対象になるか調べたりする必要があります。

これらの事務手続きは基本的に本人に行ってもらう必要があるのですが、受給者が単独で行うことは肉体的にも実務的にも困難な場合があります。

その点、上司が付いてきてもらって雇用保険や労災保険の有無、会社として行える手続きを説明・代行してもらうことができれば本人にとって迅速かつ適切な保護の実施ができることになります。

会社にとっても今後の見通しがわかるから

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Photo by Pixabay on Pexels.com

生活保護の相談時に上司などが同行する場合の多くは身寄りがない方でしょう。

この場合、今後の雇用継続等の見通しが立たないと本人の介護等の負担が会社側に乗りかかってくる可能性もあるのではないかと心配になるでしょう。

福祉事務所に生活保護の相談に行き、職員から今後の見通しについての説明があれば今後の不透明感が払拭され、会社としても安心できるでしょう。

具体例

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Photo by cottonbro on Pexels.com

最後に会社側が同行し生活保護の相談をする際に考えられる例をいくつか上げていきたいと思います。

なお、これらはすべて私の創作であり実際に起きたものではありません。

身寄りのない病気のある高齢の社員について

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Photo by Craig Dennis on Pexels.com
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相談者:町工場経営(三代目)
対象者:70代男性 独身
40年以上工員として務めていたが数年前に脳梗塞で倒れ、後遺症が残った。
先代から真面目に勤めていたこともありしばらくは簡単な仕事をさせていたが、年齢も相まって今後の就労継続が困難な状況にある。
先代の意向で寮に住み続けてもいいことになったが家賃は払ってほしい。
本人は雇用保険や健康保険の対応外で年金の金額も少額、顧問の社会保険労務士に相談したところ生活保護の相談を勧められた。
身寄りがなく脳梗塞の後遺症のため一人で各種手続きを行うことが困難であるが、保護申請に対して同行することは可能か?

アイコン名を入力

ぜひ保護相談・申請時に同行をお願いしたいです。
ここまで会社としてバックアップしてくれるところも少なくそこまで考えていただけるだけでも嬉しい。
保護受給時には保険の切り替えや家賃証明書の提出など多少の事務手続きの協力をお願いすることになるかもしれません。

本人独力での申請が難しい場合

green rice plantation in tropical valley
Photo by Tom Fisk on Pexels.com
質問者

相談者:農業法人経営者
対象者:30代 独身
数年にわたり農業を手伝ってきた対象者だが、休日に交通事故に遭った。
このため今後の就労が困難になった。
相手方は無保険で賠償金の支払いが望めず生活に困窮している。
対象者の母親は近隣市において健在(父は死去)だが、知的障がいがあり実家に戻ることも難しそうだ。
本人には障害手帳などはないが日頃の受け答えなどを鑑みるに軽度の知的障がいがありそうでとても申請における諸手続きができるとは思えない。
会社として諸手続きの手伝いは可能か?

坂本

ぜひ本人を助けてほしいです。
今後の生活に際しては施設入所や母の元へ戻るかなど福祉事務所内で検討することになるでしょう。
仮に生活保護受給となる場合には会社としての手続きを滞りなく進めていただけるとありがたいです。