元ケースワーカーの坂本です。
たまにテレビで放送される「記憶喪失をしたこの人は誰なのか?大公開捜索!」みたいな番組をご存知でしょうか?
記憶喪失になった人をテレビで放送し、視聴者から情報を得るものです。
テレビ番組になるぐらいだから稀なケースだと思うかもしれません。
しかし、生活保護のケースワーカーをしていた際に実際記憶喪失になった人の回覧が回ってくることが多くありました。
こういった記憶喪失の場合は一切手がかりがないから全国に回覧が回ってくるのです。
と、いうことは身分証を持った状態で記憶喪失になったり家族から捜索願が出されたりしてすぐに身元が判明する方は更に多くいるということです。
今回は、そんな記憶喪失者(身元不明者)についての雑記的な記事になります。
自分は実際に身元不明者の対応をしたことがないため、各種通知やマニュアルを元にした推測記事になるのでその点はご容赦ください。
身元不明者の典型的な対応
身元不明者の典型的な対応については上のフローチャートを見ていただくとわかりやすいと思います。
順を追って解説していきます。
自分の記憶がないことを知る
まず身元不明者は記憶がないことに突然気付くパターンが多いです。
電車の中で自分記憶がないことを気付くなどその様態はさまざまです。
ただ、こういった記憶喪失者は東尋坊や富士の樹海など、いわゆる「自殺の名所」近辺で保護されることが多い印象。
おそらく自殺未遂のショックで記憶を失った可能性が高いのではないかと思います。
警察による保護
記憶喪失であると気付いた場合、多くの記憶喪失者は交番に駆け込みます。
すると底で警察によって保護されます。
また、倒れているところを通行人等によって保護されるパターンも多いです。
入院
警察のフローは専門外なので詳しくは不明ですが、おそらく事情聴取を経て病院(精神科)の医師の診断を受けることになります。
外傷や認知症・脳血管疾患による記憶喪失も考えられるからです。
また、まれに記憶喪失であると嘘をつく方もいらっしゃいますので入院時には詐病かどうかも確かめることになるでしょう。
身元不明者に対する福祉事務所の介入
生活保護の受給決定
さて、入院した記憶喪失者、身分証も持っておらず記憶も回復せず親族から捜索願も出されていないとすると、困るのは今後の生活です。
通帳やカード、スマホも持っていないとなるとお金を引き出すこともできないため医療費の支払いもできなくなってしまいます。
こういった場合、福祉事務所は生活保護の決定をもって身元不明者の当面の生活費及び治療費を確保します。
当面の生活の確保
単なる記憶喪失の場合は治療の必要がないため精神科からの退院が求められることになるでしょう。
その後は何らかの施設、おそらくは「救護施設」にしばらく入って記憶が戻るか家族からの連絡を待つと言った形になると思います。
余談:記憶が回復した場合、生活保護費を返還することになるだろう
生活保護受給後、記憶が回復した、家族が見つかった場合、どうなるでしょうか。
家族に引き取られていくことになりますが、保護費の返還が求められることになるでしょう。
生活保護法第63条(俗に「63返還」といいます)の対象となると考えられます。
第63条
生活保護法
被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
これは生活保護費を本来受ける必要がなかったから。
(銀行口座等にお金があったが記憶喪失で引き出せず、やむを得ずお金を立て替える形で生活保護を受給していた)
つまり保護受給期間中に支給されたお金・現物支給された医療費の返還を求められるのです。
なお医療扶助費は10割負担になるため精神科入院時の医療費を考えると他法他施策でのなんらかの措置がない限り凄まじい金額(数十万円はくだらない)の費用返還が求められることになるでしょう。
記憶は喪失しない方が得ですね。