こんにちは!
元生活保護ケースワーカーの坂本です。
「生活保護の相談・申請時に地方議員を同行させると生活保護が通りやすくなる」
とまことしやかに言われています。
一般にそういった情報は各党の関連機関のサイトや左派メディア、実際に生活保護を受給した人のブログなどで散見されます。
しかしながら、元生活保護ケースワーカー的には「生活保護の申請をする際に議員の同行は必要ない」と思います。
あくまでも議員の同行は
「うまく話せない相談者を議員が補助する」
「申請時に必要な書類の用意を代行してくれる」
という効果しかないと思います。
「相談がスムーズに行われる」ことはありえるかもしれませんが、「議員がいるから生活保護が通りやすくなるわけではない」ことは確実です。
少なくともあなたが現在生活に困っており、生活保護の相談・申請を考えていたとして、この記事を全て読むことができる理解力があるのであれば議員を同行させるのは不要だと思います。
また、議員に同行してもらうということはその分しがらみができるわけであり、元からその党のシンパや宗教の信者でない限りデメリットになる可能性も否定できません。
どうしてもというのであれば弁護士や保護の同行をしてくれるNPOなどを頼った方がいいと思います。
もっともそれらも党の外部団体かもしれませんが…
というわけで、今回は「生活保護申請時に議員の同行をお願いするメリット・デメリット」及び元生活保護ケースワーカー的に「議員同行の必要性が低い理由」について書いていきたいと思います。
- 議員を連れて行くことで生活保護になりやすいわけではない
- 上手に話せない場合の補助をしてくれることはありうる
- 議員との「しがらみ」が生まれる可能性がある
- 生活保護の相談・申請の9割以上は本人だけで相談に来ている
議員を生活保護申請する際のメリット・デメリット
まず、生活保護を申請する際に議員を同行するメリット・デメリットについて書いていきたいと思います。
メリット
話が早い
生活保護の申請に協力してくれるような党の議員は何度も生活保護の相談・申請に同行しています。
彼らは生活保護のプロフェッショナルではないものの、相談・申請の流れを知っているのです。
このため相談者本人の事情を予め聞くなどして「どんな点で困っているのか」「どういう点で困窮しているのか」を議員なりにまとめてくれると思います。
そしてまとめた点を面談時主張してくれます。
このため、議員が同行してくれたほうが生活保護の相談・申請時に話が早く進むのは事実でしょう。
実際に相談・申請業務に携わっていた私としても「議員が来てくれたほうが話は早くまとまる」と思いながら働いていました。(興奮した対象者をなだめてくれたりするし…)
手続きの相談にのってくれる
収入が証明できるものや保険証書をはじめとして生活保護を申請する際には様々な書類を用意する必要があります。
ただ、生活保護の相談・申請をする方の中にはこうした事務作業が不得手な人も多いです。
この場合予め議員に相談しておけば必要な書類を見繕ってくれる可能性があります。
もっとも、福祉事務所も手続きのサポートは適宜してくれます。
よほどのひとではなければ議員をわざわざ利用するメリットはこの点大きいとは言えません。
おかしいと思う点を反論してくれる
生活保護の相談・申請時においては本人が上手に説明できない場合、職員が話すペースに載せられてしまうこともあるかもしれません。
本人としては「生活保護の申請がしたい」と思っていたとしても職員は「生活保護の相談に来たんだ」と誤解して話に齟齬が生まれる可能性もあります。
しかしながら、その際に「私は生活保護の申請がしたくて来たんだ!」と強く主張することができる人は正直多くないでしょう。
福祉事務所の面談室に入り、生活保護というものを申請する立場、つまり本人的には「アウェイでやりたくないことをお願いする」状況といってもいいかもしれません。
その点議員がいれば本人の本来の目的のために軌道修正や反論をしてくれるのは確実で、この点はメリットと言えると思います。
デメリット
議員が同行しても黒を白に変えることはできない
はじめに言った通り議員が同行したとしても生活保護になりやすいわけではありません。
生活保護というのは本人の収入が最低生活費を上回っているか否かによって決まります。
つまり生活保護は機械的に決定するわけです。
仮に議員がどれだけ圧を掛けたところで生活保護になりえない収入の人を生活保護にすることはできません。
議員が同行したところで黒は白に変わるわけではないということだけは覚えておいてください。
議員とのしがらみが生まれる
議員の力を頼って生活保護の相談・申請を行った場合、当然その党・その議員とのしがらみが生まれます。
ここからはあくまでも憶測ですが、党費や機関誌などの購読を求められるかもしれません。
自分が納得していれば問題ないですが、そういったしがらみはおそらく生活保護を脱した後も続くことになるでしょう。
生活保護申請時に議員を同行したほうがいい人
最後に生活保護の相談・申請時に議員を連れて行った方がいいと思う人について簡単に解説していきたいと思います。
もともとその党の党員
もともとその党の党員、または支持母体の宗教の信者であった場合、議員の同行をお願いしてもいいと思います。
もともと議員と関わりがあるため、生活保護受給に助力を頼んだとして新たにしがらみが生まれることもないからです。
他に誰も頼ることができない人
以前別の記事で「生活保護の相談には友人・上司の同行も可能」という話をしました。
やはり一人で生活保護の相談・申請手続きを行うのは元職員から見てもなかなか困難だと思います。
相談の際はメモ役や助言・心理的支えをしてくれる人と一緒に行ったほうがいいと思います。
ただ、家族や友人など他に誰も頼る人がおらず不安で仕方がないという場合は議員を頼ってもいいかもしれません。
ただ、彼らが手伝ってくれるのはあくまでも保護の相談・申請まで。
元々関わりがあったり党員になったりしないのであればよほどのことがない限りは保護受給後に何かをしてくれるわけではないでしょう。
理解力に問題を抱えている人
生活保護を相談・申請される方はやはり理解力に問題を抱えている方が多いです。
これは知的障がいを抱えている(抱えているであろう)方だけでなく、精神疾患によって一時的に考えがまとまらなくなっている人なども含みます。
そのような方の場合保護の相談において上手に現状を説明することができず、結果的に生活保護の申請につながらない場合も考えられます。
こういった場合においては議員に助けてもらうことも一つの手段かもしれません。
この場合も信頼できる友人がいればその方と一緒に来れば議員の同行は不要でしょう。
仮に一人で行く場合でも予め何に困っているのかをメモや文章にして相談時に提出する方法でも代替可能だと思います。
総評:少なくともこの記事を最後まで読むことができた人に議員同行は不要
ここまでの文字数は約2,800文字。
この長い文章を読めた方なら議員の同行は不要でしょう。
なぜならばあなたには理解力があるからです。
生活保護の相談・申請は「現在のお金の状態」「何に困っているのか」を主張することが大事です。
議員を連れて行ったところでこの2点を代わりに主張してくれる、書類手続きを手伝ってくれる程度の効果しかありません。
これは知人や弁護士を連れて行ってもその効果に大した変化はないでしょう。
元ケースワーカー的には生活保護の相談・申請の場において議員の同行は特に必要がないと言わざるを得ません。
もっとも「一回役所に相談したけど断られた」という場合ならば議員の利用を検討するに値すると思います。