こんにちは、坂本です。
私は市役所職員として生まれ育った地元の自治体にUターン就職して6年奉職しましたが、公務員という仕事を辞めて現在はWebマーケターとして仕事をしています。
さて「地元で地方公務員」をするというのは一つの生き方として正解であると世の中では考えられています。(特に産業のない田舎では)
しかしながら、地元の自治体に地方公務員として就職することにおいてはメリットもありながらデメリットもあるのも事実です。
今回は元地方公務員として地元自治体に就職するメリット・デメリットについて書いていきます。
個人的には基礎自治体に就職した場合、「隣の市に就職する」か「結婚・出産時に地元でないところに家を構える」のが正解だと思います。
地元就職のメリット
合格しやすい
地元就職者のメリットとしては試験に受かりやすいというのはあるでしょう。
選考はブラックボックスですが、縁もゆかりもない自治体に出願するよりも地元自治体の方が出願理由も考えやすいです。
採用側からしても地元に残って仕事・経済活動をしてくれる方が自治体の中で金が循環するため嬉しいという点も見逃せません。
実家から近い・実家から通える
まずもっと地元に公務員が就職するメリットは実家から近いというのが挙げられます。
地方公務員の給与は30歳を超えるようにならない限り非常に低いのが現実。
よほどの自治体でなければ官舎や借り上げ住宅も期待できません。
住宅手当も大企業に比べると低いでしょう。
このため特に新卒で就職した職員は実家から通うのがほとんどです。
実家から近いのはその点有利。
8時まで寝ていても大丈夫なのは強いといえます。
仕事上における根回しが楽
住民との対応に関する部署に配属された場合、団体のお偉方は地元の60~70代がほとんどです。
そのような方々と関わっていくと、「〇〇さんの息子さんか!」「○○の孫か!」という場面は意外と多いです。
特に私は祖父がかつて自治会長をしていた件もあり、知り合いの知り合いみたいな人は数多くいます。
特に田舎においては人間関係がものを言う場面は数多くあります。
企業に比べて金銭が関わらない自治体や団体相手の折衝においては、「誰が言うか」「同感情をなだめるか」がポイントとなる場面は多く、この場合、「〇〇さんの子ども・孫」というパターンは非常に便利でした。
これは話のとっかかりになるうえ、根回しをする際にとっても楽になるというメリットがあります。
地元を知っているから仕事が早い
あたりまえですが地元出身者は地元に詳しいです。
地理・地名は言うまでもなく、福祉関係においてはこの家の人が独居だとかまで知っていることもしばしばです。(自分はそうでした)
これによって新卒ならば電話対応で「○○町の者だけど…」と市民からの苦情において迅速に対応できるでしょうし、中堅になったとしてもその地域における元々の問題を住民としてなんとなく知っていることで役立つ部分もあるでしょう。
デメリット
市民と住民の間が曖昧
地元自治体で働いているということは職員でありながら市民であるということです。
この境目が曖昧になってしまうのが難点でしょう。
特にボランティアに関わる部門や24時間稼働している部門においてはどこまでが仕事でどこまでがプライベートなのか分からない、常に気が休まらないという問題と常に向き合わざるを得ません。
会いたくない市民とプライベートで顔を合わせる可能性
福祉課や税収納に関わる部門で働いていると、どうしても特定の市民から恨まれることがあります。
これは職務上どうしようもなく、逆恨みに近いものがほとんどです。
ただ、同じ自治体で働き、同じ自治体に住んでいると休日に鉢合わせすることもありえます。
実際に私が生活保護担当であったとき、私の上司の息子と問題ケースの娘が同じクラスであったということがありました。
平日は毎日窓口で怒鳴りあった人間と授業参観で鉢合わせたなんてこともあったそうです。
また、先輩はスーパーで悪質な税滞納者が買い物をしているのを見て購入物から懐具合を勘案し差し押さえしたとのこと。
個人的には休日に生活保護受給者と同じ自治体にいないといけないというのがストレスでした。
消防団を強制させられる
特に新卒で田舎自治体に就職する男性職員に伝えたいのは、地元就職で消防団を断ることはほぼ不可能ということ。
私が奉職していた自治体では最終面接において市長から消防団に入るかどうかの質問があり、「いいえ」と答えると面接に落ちるとまことしやかに言われていました。
もちろんそんな条件付きの採用は違法なうえ、仮にそれを開示請求したところで選考内容について明確な回答が得られることはないため真相は闇の中です。
(自分の場合はそもそも入るのが前提で話が進んでいたのでそもそもしつもんすらありませんでした)
この場合男性職員はみな「はい」と答えざるを得ません。
他市自治体職員については入庁後の消防団入団を拒否することは色々理由をつけてやることができるでしょうが、地元住みの人間が入団を拒否することは不可能でしょう。
お金にほとんどならず、休日が潰れる消防団への入団を事実上強制させられるのは地元就職者の辛いところです。
女性なら関係ないですけどね。
地元就職のデメリットを打ち消すおすすめの方法
「隣の自治体」を受ける
全くの地元ではなく「隣の自治体」に出願するのは一つの方法です。
この作戦は「日程が違う」こと「隣の自治体の方が人口等規模が大きい」場合に有効でしょう。
隣の自治体に出願するのであれば出願理由も簡単なうえ、「こっちのほうが大きい市だから」と説明すれば面接官も納得するはずです。
実家から通えるメリットを享受しながら地元のめんどくさいしがらみを避けることができるため、「隣の自治体」を受験するのは地方公務員として有効な戦術でしょう。
結婚・出産を機に「住んでいる自治体を脱出」する
地元自治体に就職し、実家でしばらく過ごし、結婚・出産を機に隣の自治体に家を構える、これも有効な手段です。
実際に自分が働いていた自治体では結婚した若手職員の多くはこの方法を取っていました。
私も仮に働き続け、結婚していたらこの手段を取って脱地元をしていたと思います。
生活保護受給者や税滞納者としてやりあった相手の子ども同士が同じクラスであるなんてことは耐えられないですし、退職後も自治会や町内会などの役職をあてがわれてしまってはたまらないです。
まとめ:自治体は地元出身者を採用したいという風潮はある
地元出身者を採用したい、これが自治体の本音でしょう。
辞めない、自治体のことを知っている、退職後も住み続けてくれる
これらのメリットを持っている人を採用したいと自治体は考えています。
ただ、元地元就職者として外から通っている人に比べて「余計な仕事を背負っている」というのは常に感じていました。
公務員としてはどうかと思いますが、一人の人間として考えた場合、地元の自治体に就職するというのはおすすめできません。
どうしても地元就職ならば家を建てる場合に自治体の外に居を構えるのが正解だと思います。
もちろんその自治体が好きならば止めはしませんが。