こんにちは、元生活保護ケースワーカーの坂本です。
今回は生活保護受給中における自動車の保有についてその原則と例外について解説していきたいと思います。
生活保護を受給すると車に乗れない、そう思っている人は多いのではないでしょうか?
結論から申し上げると「原則は自動車保有禁止」です。
もちろん知り合いやレンタカーを運転するのもNG
一方、少数ながら例外もありますので知識として知っていていただくとよいかと思います。
首都圏ならいざ知らず、公共交通機関の少ない地方で生活するのであれば自動車は必需品だと思います。
最低限文化的な生活と自動車の保有の両立も今後の課題になっていくことではないかと思います。
自動車の保有は原則禁止、その理由は?
始めに申し上げました通り、生活保護受給中において自動車の保有は原則として禁止されています。
理由としてはいくつかありますが以下の点が考えられます。
資産活用
生活保護の受給要件の中に「資産活用」というものがあります。
これは「生活保護を受給する前に今持っている資産を活用しなさい」というもの。
例えば預貯金の活用、保険の解約、高額な物品の売却などなどが挙げられます。
この資産活用の中に自動車を売却し、そのお金を保護受給の前に活用してくださいという考え方です。
保護受給中の金銭の圧迫
自動車を保有することは社会人にとって重荷になります。
駐車場代、ガソリン代、税金、任意保険料などなど…
それらの費用を生活保護費から捻出するのは仮に軽自動車であっても非常に困難です。
生活保護費、生活扶助は自動車の保有を念頭にして金額が設定されているわけではありません。
つまり、生活保護受給中に自動車を保有する場合、食費などの生活費を切り詰めないといけない可能性があるわけです。
娯楽・買い物用途に自動車を利用することが「最低限文化的な生活」に含まれるのかという問題
自動車を娯楽や買い物などの用途に使用することが「最低限文化的な生活」に含まれるとは思えません。
首都圏の生活者や学生ならば自動車を保有せずとも「最低限文化的な生活」をしているわけですから、それを娯楽や買い物の用途に利用することがふさわしいのかという問題があるでしょう。
自動車保有の例外
原則があれば例外もある。
生活保護受給において自動車保有を認められる例外はいくつかあります。
なお、これらの場合保護受給前から自動車を保有していた時に利用できるものであり、保護受給中に新しく車を購入することができるわけではないことに注意してください。
障がい者が通勤・通院に利用する場合
ほとんど認められる余地はありませんが、障がいを持たれている方が通院や通勤に利用する際に自動車の保有が認められることがあります。
しかしながら下記の要件があり実務的に認められる可能性は少ないでしょう。
などの条件に当てはまらない場合の例外的な対応であるため、実際問題自動車の保有が認められる余地はほとんどないでしょう。
おおむね6か月以内に就労により保護から脱却することが確実に認められるもの
次に「おおむね6か月以内に就労により保護から脱却することが確実に認められるもの」の場合。
これは例えば「次の仕事先が保護受給開始時には既に決まっている」場合が典型です。
すぐに生活保護から脱却できるのに自動車を処分させると仕事に通うのが難しくなるなど自立を妨げるため無体であると言った場合がこれに相当します。
余談
資産価値(処分価値)のない車ならばナンバー返納して保有を続けることも
10年落ち以上の車で処分価値がない場合についてはナンバーを返納し、登録を抹消した状態で駐車場に置きっぱなしにするという対応もあります。
この場合、当該抹消した車は駐車場に置いてあるだけの物になり、当然公道走行はできません。
病気で数年働けないが、体調回復後は再就職を考えており現在の車は手放したくないといった方と話し合ってこのような対応をしたことがあります。
受給者が自動車に乗っていたというタレコミは結構ある
受給者が自動車に乗っていたというタレコミはけっこうあります。
その受給者の知人や近隣トラブルを抱えていた者(敵)が福祉事務所に電話をしてくるのです。
その際は実際に調査を行い、保有が明るみになれば指導や廃止(保護打ち切り)などの厳しい対応を行います。
なお、知人の車を借りて運転することも当然生活保護受給中においては認められていません。
こういった場合は調査を行い本人に対して指導を行います。
特に悪質な場合、保護の廃止(打ち切り)も検討に入ります。
保護受給中においては自動車の運転は認められていません。
あなたが生活保護の受給者であり、どうしても必要な場合については事前に福祉事務所に相談すべきでしょう。
自動車に乗ることはできないでしょうが、何らかの代替手段を提示してくれるかもしれません。
まとめ:自動車の保有は原則認められないが、地方において実情に即しているのかという問題は残っている
生活保護受給中において自動車の保有は原則として認められていません。
しかし、数年前には引っ越しなどどうしても必要がある場合においてのみレンタカーの使用を認めるかどうかという議論が厚生労働省内でありました。
地方でケースワーカーをしていた自分としては、高齢者ならともかく稼働年齢層で自動車を保有していないのは仕事を見つけるにあたって大きな支障になると常に思っていました。
面接に行こうにもそこまでの足がなくその仕事に応募するのを諦めたり、実際に働き始めても通勤が困難で仕事を続けられなくなったりと自動車がないことで自立を阻害している現状があります。
自動車の保有に際しては地方ごとに判断を行うなど柔軟な対応をとってもいいのではないかと思います。